糖質制限で失敗しやすいパターンを書きます
長いです笑
参考にどうぞ
目次
人間に糖は必要ない、は誤り
よく言われる「ケトン体になれば脂肪が脳のエネルギーになるから糖質は必要ない」という理論。
これは誤りです。
脳がケトン体をエネルギーに出来るのは70%程度で、実は30%はブドウ糖をエネルギーに使用しています。
また、赤血球もブドウ糖をエネルギーにしています。
脳には脂肪は入り込めませんし、赤血球には脂肪を代謝するミトコンドリアが存在しません。
脳も赤血球もブドウ糖のエネルギーが必要なので、ある程度の糖質は絶対に必要なのです。
なぜ断糖でエネルギー不足にならないのか
糖質は人体に必要不可欠であるにもかかわらず、断糖でエネルギー不足にならないのはなぜでしょうか。
それは、体内で糖質を作り出す、糖新生という機能があるためです。
糖新生とは体内のタンパク質や中性脂肪から糖質を作りだす働きの事です。
タンパク質とはすなわち筋肉の事で、身体の筋肉を分解して糖質を作りだします。
この分解によって身体の筋肉量が減るのですが、人体では常に筋肉を作り出しているので、実質的には筋肉は減りません。
また、中性脂肪からも糖新生が行われています。
中性脂肪とは、脂肪酸とグリセロールが合わさって出来ています。
中性脂肪から糖新生する時には、ホルモン感受性リパーゼという酵素が作用し中性脂肪を分解します。
中性脂肪が分解されると遊離脂肪酸とグリセロールができます。
このグリセロールはグルコースの材料になり、脳のエネルギーになります。
断糖によって、運動しなくても一気に痩せていく理由は、糖新生によって中性脂肪を分解して、脳に必須であるグルコースを作り出しているからなのです。
ですので、断糖する際には、筋肉を分解する糖新生ではなく、中性脂肪を分解する糖新生を活発化させる方が減量効果は高いと言えます。
中性脂肪からの糖新生を活発にするには
中性脂肪を分解するには、脂肪を分解するホルモン感受性リパーゼという酵素を活性化する必要があります。
逆に、インスリンはホルモン感受性リパーゼの働きを弱めてしまいます。
身体がエネルギー不足になると、グルカゴンというホルモンの働きでホルモン感受性リパーゼを活性化させ、中性脂肪の分解を促しエネルギーを発生させます。
グルカゴンは下がった血糖値を高め、脂肪の燃焼を促す効果があります。
脂肪酸はタンパク質に包まれた状態で血液中をめぐり身体の各組織に運ばれます。
運ばれた脂肪酸からエネルギーを発生させるのはミトコンドリアの仕事です。
この時、脂肪酸をミトコンドリアに取り込むにはL-カルニチンという物質が必要になります。
L-カルニチンがダイエットに効果があるとされているのはこのためです。
ケトジェニックに有効とされるMCTオイルは、L-カルニチンを使わずに直接ミトコンドリアに作用する事ができます。
ミトコンドリアを上手く働かせるには、ご存知ATPセットが必要です。
基本的には、断糖による糖新生で筋肉が失われないように、身体は成長ホルモンを多めに分泌して、筋肉分解を防いでいます。
さらに、身体はミトコンドリアの代謝を高める為にアドレナリンやノルアドレナリンの分泌も促します。
ホルモン感受性リパーゼを活性化するには、コーヒーのカフェインが効果的と言われています。
また、ケルセチンといわれる、玉ねぎに含まれている成分も、リパーゼを活性化させると言われています。
ケルセチンは玉ねぎの皮に多く含まれているため、粉末にした玉ねぎの粉をコーヒーに混ぜることで大きな効果が期待できそうです。
ケルセチンはアレルギーにも効果的です。
もう何回言ってるか分かりませんが、「酢玉ねぎ」はオススメです。
中性脂肪の分解は肝臓で行われる
中性脂肪の分解は肝臓でおこなわれるため、糖質制限中は肝臓に大きな負担がかかりやすいです。
肝臓に問題があったり、飲酒などの暴飲暴食で肝臓が疲労していると、糖新生が上手く働きません。
普段の糖新生は肝臓がメインなのですが、断糖が長引くと副腎での糖新生の割合が高くなります。
またホルモンであるコルチゾールも糖新生を促すのですが、これは副腎より分泌されます。
そのため、副腎疲労があるとコルチゾールが正常に分泌されず、糖新生も上手く働かなくなり、低血糖になる可能性があります。
糖質制限失敗の理由まとめ
- 脂質代謝が悪い
- 成長ホルモンが少ない
- 副腎疲労がある
- 肝臓の働きが悪い
これらの症状がある場合、糖質制限しても低血糖などの症状が出たり、筋肉分解による糖新生が優先されて筋肉量の減少、体脂肪率の増加が起きることもあります。
ケトン体になるまで
ケトン体のシステムは複雑なので簡単に書きますw
断糖し、脂質の摂取量を増やすと、アセチルCoAという物質が大量に余ります。
この余ったアセチルCoAは肝臓でケトン体になります。
ケトン体は水溶性なので血管を通して全身に運ばれてエネルギーになります。
そしてミトコンドリアでATPを発生させます。これは脂肪酸をエネルギーにする原理と同じです。
ケトン体を出すには、断糖し、脂質の量を増やしてアセチルCoAが余る状態を作り出さなければなりません。
このアセチルCoAが余る段階までは、ケトン体が不足してしまい脳を補う程度のエネルギーにならないので、糖新生が脳の主なエネルギー源になります。
ですので、完全にケトン体として以降するまでは、筋肉や脂肪が糖新生でエネルギーとして消費されやすいということになります。
断糖3日程度でようやく脳の1/3程度でケトン体を使い出すといわれています。
一ヶ月ほどで、脳は2/3程度ケトン体をエネルギーに使うようになります。
糖新生での糖質生成量は1日80g程度です。
ケトジェニックにならない場合、脳だけで1日120g程度の糖質を必要とします。
ケトン体で補えるエネルギーは2/3程度ですから、ケトジェニックでも1日30〜40g程度の糖質は必要です。
これに赤血球への糖質も必要となると、断糖中でも1日50g前後は糖質が必要になります。
ケトジェニックダイエットはケトン体が出ることで痩せると思いがちですが、それは誤りです。
ケトン体に移行する段階で、糖新生が活発に働き、筋肉や脂肪を分解するから痩せる。
これがケトジェニックの急激な体重減少効果です。
ケトン体は効率の良いエネルギーですから、完全にケトジェニックに移行すると、体重はあまり減らなくなってきます。
糖質制限の問題点
糖質制限にもやはり問題はあります。
断糖によってインスリンが働かなくなると、グルカゴンやコルチゾール、アドレナリンが増加して脂肪酸の分解を促します。
アドレナリンの分泌はやる気を出すというブラスの作用もありますが、イライラして攻撃的になりやすいというマイナス面もあります。
断糖によって攻撃的になったり、批判的になったりするかもしれません。
アドレナリンなどの影響で、ホルモン感受性リパーゼが活性化すると、脂肪の分解が増えて、血中に大量の遊離脂肪酸が放出されます。
これが毒性を持つとともに、血中ケトン体をさらに増やしていきます。
血中遊離脂肪酸濃度が高まると、不整脈からの心臓突然死を引き起こすと言った可能性もあります。
血中遊離脂肪酸濃度が高くなったことによる突然死は、マラソンランナーに多いです。
断糖実践者は注意が必要です。
糖質制限をすると脂肪酸を使うようになり、酸素の消費量が多くなります。
また脂質の摂取量がふえるため、酸化しやすい不飽和脂肪酸の摂取量もふえます。
このために老化が進む活性酸素が増えやすくなってしまいます。
断糖では野菜の摂取量も減るため、抗酸化作用のあるファイトケミカルなどの摂取量が減るのも問題です。
活性酸素除去のため、糖質制限者はサプリでビタミンEの摂取を増やした方がよさそうです。
また、中途半端なロカボでは糖新生を活発化しやすいと考えられます。
三大栄養素で最も必要なのはタンパク質と言われていますが、糖新生による筋肉分解はタンパク質の無駄使いといえます。
ロカボの場合は余計な筋肉分解を防ぐために、糖新生が起きない程度の適切な糖質量を探る事が重要だと考えられます。
断糖では耐糖能異常も問題です。
糖質による血糖値上昇がなくなるため、インスリンが正常に働かなくなる状態です。
一生涯糖質を摂取しないならいいのですが、なんらかの災害に巻き込まれたりすれば、おにぎりなどの糖質を摂取する必要も出てくるのではないでしょうか。
ⅬowT3症候群
甲状腺機能の異常で、甲状腺機能低下と同じような症状が発生します。
極端なカロリー不足によって体の代謝が下がったり、冷え性になったり、便秘になったりする症状です。
これになってしまうと不調が続く上に体重が減りにくくなります。
糖質制限を行った人でまれに出る症状で、糖質の代わりにエネルギーになるタンパク質や脂質の摂取が少なかったり、
そもそもタンパク質、脂質の代謝が下手だったりすると起こります。
代謝が下手な人は糖質制限が向いてないと言えます。
コレステロールが高くなるとⅬowT3症候群が疑われます。
糖質制限のデメリットも理解した上で健康には十分配慮したいところです。
考察
色々書きましたけど、脂質代謝が悪かったり、腎臓、肝臓に問題ある人は糖質制限に向いてません。
タンパク質が不足してる人も糖質制限は向いているとはいえません。
まずはタンパク質を補給しつつ、糖質の摂取を多少減らすくらいを心がけて下さい。
タンパク質の大量摂取は、筋肉分解による糖新生を促進させます。
上に書いた通り、タンパク質を摂取するとインスリンが分泌されて、それがホルモン感受性リパーゼの働きを阻害するからです。
ですのでプロテインなどでタンパク質を頻繁に摂取すればするほど、インスリンが作用してリパーゼの働きが弱くなり中性脂肪による糖新生が行われにくくなります。
タンパク質を摂取していると、糖新生による筋肉量の減少によって体脂肪率は増えやすいのです。
ロカボなど中途半端な糖質制限に高タンパクを組み合わせると、身体は筋肉分解による糖新生を盛んにするのであまり有効ではないと言えます。
筋肉分解を抑えるには、速やかに断糖した方が良いです。
ロカボならタンパク質ばかり増やさず、脂肪の摂取を増やしてカロリーを補う事も重要になってきます。
ケトジェニックではタンパク質をたくさん摂る、と言った指導も多いですが、これは誤りです。
タンパク質はインスリン分泌によって脂肪酸分解を阻害するため、脂質をメインに摂取し60〜75%程度のカロリーを目指す必要があります。
そうなるとタンパク質は10~30%、糖質は5~10%程度の摂取になります。
ケトジェニックではタンパク質摂取が少ないのですから、筋肉合成もしにくいと言えそうです。
これからのケトジェニックは、肥満、病気の治療や、スポーツ選手、ビルダーの減量など、ピンポイントでの活躍が主になるのではないでしょうか。
まとめ
- 糖新生では筋肉の分解に注意が必要
- タンパク質の摂取は筋肉の分解を招きやすい
- 肝臓、腎臓に悪い生活は避ける(アルコールなど)
- 代謝の力は人それぞれなので、カロリー不足に気を付ける
あとがき
現在わたしは糖質制限を行っていません。
上記の通り、糖質制限は筋トレには向かないからです。
完全なパフォーマンスを追求するなら、毎食の糖質量を厳密に決めつつ、血糖値の上昇にも気を配る必要があります。
スポーツ選手で結果を出すなら、長友選手のようにこだわった管理が必要ですね。
また、筋肉量にこだわりがないなら、ロカボで気軽に糖質制限するのも良いでしょう。
ロカボでも体脂肪が減りにくくなってきたら食事を見直してみてください。
筋肉の糖新生が活発に起きている可能性がありますね。
長々と書きましたが、自分の代謝や筋肉量と相談しながら、健康的に糖質制限を成功させたいですね。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。